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いまなぜ表情に焦点を当てるのか

マツモト教授に聞く
─「マツモト・メソッド」の開発 ─

── なぜ表情に焦点を当てるのでしょうか?

David Matsumoto, Ph.D. (デーヴィッド・マツモト)教授

■マツモト教授

言葉以外であらわす「非言語行動」は、コミュニケーションの重要な要素になっています。なかでも、エモーション(感情)を秘めた顔の表情は、人間のもっている最も重要な複合的な通信システムなのです。

顔の表情にあらわれるエモーションは、いったいいくつあるでしょうか? 実は、近年の研究によって、人類に共通する顔の表情のエモーションは、つぎの7つであることが判明したのです。

@喜び(joy)、A悲しみ(sadness)、B恐怖(fear)、C驚き(surprise)、D怒り(anger)、E軽蔑(contempt)、F嫌悪(disgust)

しかもこれらは人種・民族・文化・年齢・ジェンダー・宗教を問わず、普遍的なもの、いうなれば、世界共通で、まったく同じにあらわれます。

── この分野の研究はどのような歴史をたどってきたのでしょうか?

■マツモト教授

実は、現在の普遍性の理論をはじめて提示したのは、ほかでもないチャールズ・ダーウィンでした。今から100年以上も前のことです。

その後、1960年代までは、心理学では、最新理論とは正反対のものが定説になっていました。つまり、顔の表情にあらわれるエモーションは、言語と同じように、文化特有のものだとされていたのです。

1962年に S・S・トムキンズがダーウィンの説を再検証しはじめ、私の恩師・ポール・エクマン(カリフォルニア大学サンフランシスコ校名誉教授)が協力、その後、私もフィールドワークに参加し、今日のこの定説が確立しました。

50年近い革新的な研究開発の末、この行動科学の最新の到達点と現実世界の実務的な経験を結びつけたわけです。

その結果、ユニークなトレーニングによって、エモーションや非言語行動を含む顔の表情から相手の偽善を突きとめたり、異文化に適応できる道を開いたのです。

しかも、上記に紹介した7つの顔の表情のエモーションは、2分の1秒から15分の1秒という、ごく短い間に表出されます。これらを的確に捉えれば、

  1. 相手がうそをついているのか、
  2. 相手がどう感じているのか、
  3. 相手に与えている衝撃

を瞬時に解明できるようになります。

マイクロ表情認識トレーニング(MiX)

■マツモト先生

紙数の関係で、このトレーニングを全部紹介できませんが、特徴だけをお伝えしましょう。すべてオンライン・トレーニングで行っており、

  1. 学習期間は一年間になっていますが、定められた受講時間はありません。
  2. 一日24時間いつでも、週7日間、トレーニング・ウェブサイトを利用できます。
  3. トレーニングを購入し、登録し、自分の製品キーをもらえば、e-mail によって学習できます。

── 自分の空いた時間、誰でも学習できるわけですね。

■マツモト先生

そうです。トレーニングのコースは、いくつかあります。
たとえば、

MiX コース(初級コース):

事前テストを受けてもらったあと、研修コースに入ってもらいます。6つの違った民族のグループの表情から7つのエモーションを読み取っていきます。

修了者は、少なくとも200ミリ秒のスピードで、修了のテストで80%の得点を取れば、「修了証書」を発行しています。

微細表情認識トレーニング(SubX)

Humintell 社には、このほかに SubX と略称している Subtle Expression Recognition Training(SubX)があります。私と Dr. H・S Hwang が制作したもので、もともとはアメリカ政府機関のためにファンドをもらい開発した製品です。

微細な表情は、エモーションの強さが低いので、見極めるのがたいへん難しい。最近の研究によって、微細な表情を突きとめることは、欺瞞(ぎまん)を突きとめたり、隠したエモーションの徴候を見つけるのに、きわめて重要なことがわかってきました。

これにも、「初級」「プロ級」「エリート向き」などのコースがあります。

── MiX などとの違いはありますか?

■マツモト先生

特色は、基本テストにあります。13点の指導 VTR による、70色のカラーイメージの実践テストです。

── 現在、どのような組織の人たちが受講しているのでしょうか?

■マツモト先生

  1. 政府関係部署
    1. 国務省
    2. 合衆国連邦裁判所
    3. FBI
    4. 交通安全協会
    5. サンフランシスコ警察署
    6. サクラメント警察署
  2. 弁護士、裁判官
    1. アメリカ司法協会
    2. アメリカ国防委員会
    3. 合衆国破産裁判所連邦裁判官
  3. 医師・医学関係
    1. メイヨ・クリニック
    2. カイザー常設委員会
  4. 教育関係
    1. クリーブランド州立大学
    2. カリフォルニア大学 サンタ・クルーズ校
    3. ニュー・メキシコ州立大学
    4. ブレーゼ・パスカル大学(フランス)

などで、つぎつぎに増えています。

日本でも、CATV が盛んになり、アメリカの最新の TV を各地で見ることができるようになりました。こうした作品のなかで、特に、FOXの表情認識法をカギにした Lie to Me は「私にうそをついてもダメ」くらいの感じですが、日本でもご覧になっている人たちが多いと思います。

私の恩師で共同研究者の Dr. Paul Ekman も、これらのショーのコンサルタントを務めています。

(Web-CREO No.4 2011年1月号より転載)