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世界共通の人類の感情

世界共通の基本的な感情として、驚き、怒り、悲しみ、喜び、恐怖、嫌悪の6種類があります。このサイトでご紹介している「微小表情分析」もこの6つの表情を見分けるトレーニングです。

この6種類を見てもお分かりになるように、わたしたちの基本的な感情はネガティブなものがほとんどです。なぜでしょうか?

感情は瞬間的に現れます。これは、緊急時に生命の危険から逃れるのに必要不可欠なものだったからです。わたしたちの祖先は肉食獣の格好のエサになっていましたので、常に危険を察知できる神経不安症的なものだけが生き延びることができました。

特に恐怖、嫌悪は生まれつき備わっている感情です。肉食獣が周囲にいないかを恐れ、食べるときに腐ったものを嫌悪することは生き延びるためには必須でした。現在でも感情の重要性は低下していません。

人がどういう感情を感じているかを知ることは、コミュニケーションの質を高めるための大きな第一歩です。相手がある感情にとらわれ、他のことが考えられなくなっている間、あなたがどのような反応をするかで、事態は大きく変わる可能性があります。

咄嗟にあらわれる感情には、私たちの意識は関与していません。意識的に感情を抑えることは可能ですが、その行動はすでに後手後手に回っているのです。あなたもしくは相手が意識的に感情を抑制しても、微細な表現になって顔にあらわれることは避けられません。


感情がとらえにくいのは、咄嗟に起こり、それがとてもうつろいやすく、変化に富んでいるからです。また現代人はこの感情を意識的に抑えようとします。この繊細でうつろいやすい感情を捉えるのに、顔の表情分析が役立つのです。

感情(本音)は顔に現れる

感情はヒトの生存で不可欠な存在でしたので、意識しないでも反射的に起こります。この無意識の反応が一番よく顕れるのが顔面の表情筋です。その表情筋を主に支配しているのが顔面神経です。

もちろん顔面神経は意識、つまり大脳前頭前野によっても刺激を受けて働きます。みなさんも、「しかめ面をしてください。」といわれれば、簡単にできるでしょう。

その一方で表情筋は意識しないでも感情が反射的に顔面神経を通じて働きます。また感情は顔色の変化としても現れますが、これは無意識下に自律神経系を通じて行われます。

恥ずかしい思いをして急に顔が赤くなることを経験されたことがあると思いますが、これは自律神経を通して顔面の血管が拡張するからです。

顔面神経は、特殊内臓遠心性線維 (special visceral efferent fiber, SVE) 、一般内臓遠心性線維 (general visceral efferent fiber, GVE) 、特殊内臓求心性線維 (special visceral afferent fiber, SVA) 、一般体性求心性線維 (general somatic afferent fiber, GSA) の4つに分けられます。「内臓」と名前がついている神経があるように、内臓脳つまり、脳幹、旧皮質が大脳前頭前野の意識を介しないで、直接働くために感情が顔に顕れるのです。

咄嗟の作り笑いがしっくりこないのは、意識的に大脳前頭前野を働かして顔面神経を動かすのと、無意識に顔面神経が働いてできる自然な「微笑み」とは微妙に表情筋の動き方が異なるからです。

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